牛乳のささやき

—牛乳の働きをもっと知りたい…— 

木次乳業有限会社
島根県雲南市木次町東日登228-2

 

牛乳は貴重なカルシウム源として知られ、求められてきました。
そこで牛乳の成分を中心に、牛乳の持つ働きを考えてみましょう。

 

1.牛乳の構成成分

牛乳の構成を 2 つの分類法にて示します。

 

 


 

2.牛乳の成分

 

 水分 (g)固形分 (g)乳脂肪 (g)全タンパク (g)カゼイン (g)ホエータンパク (g)乳糖 (g)灰分 (g)
牛乳87.3012.703.703.302.800.604.800.72
人乳※87.7812.223.460.810.500.316.860.20

 

 カルシウム (mg)リン (mg)鉄 (mg)亜鉛 (mg)ビタミン A (IU)ビタミン B1 (μg)ビタミン B2 (μg)ビタミン C (mg)
牛乳12596.00.100.3834.042.0157.01.60
人乳※2413.50.150.541529.4036.06.60

 

 日本人の人乳であり、分娩後 30 日の常乳

* 牛乳は子牛の骨格作りのため、カルシウム、リンや蛋白質が多い。
* 人乳は乳児の脳・神経組織の形成のため、乳糖と亜鉛が多い。

 


 

3. 乳脂肪

牛乳の中の大部分の脂肪は、脂肪球の形で拡散しています。

脂肪球は、トリアシルグリセロールやリン脂質からなる膜に覆われており、脂肪の酸化を防止しています。牛乳を静置すると比重の軽い脂肪が浮き、脂肪の層ができます。

 

*均質化(ホモゲナイゼーション)

脂肪の層(クリームライン)を形成させないようにする為、脂肪球を細かくすることを均質化といいます。脂肪球を細かくすると消化吸収しやすいと言われますが、膜を破壊することによって乳中に含まれる酸化酵素によって脂肪は急激に酸化されやすくなります。

 

*脂溶性ビタミン

脂肪の部分にはビタミン A、D、E、K が含まれております。

 

*乳中のコレステロール

牛乳の総コレステロール値は12mg/100gです。コレステロールは、食物として摂取したものは消化器官で一部吸収されますが、それ以上に多量のコレステロールが体内で合成されています。

 

<コレステロールの必要性と危険性>

 

コレステロールの役目

  1. 細胞壁などを強くします。(血管の破損防止・脳卒中の予防)
  2. ホルモン、ビタミン D を作ります。(ホルモン:副腎皮質ホルモン、性ホルモン)
  3. 胆汁酸の合成(胆汁酸は脂肪を消化するのに必要です)

 

体内の総コレステロール値と健康

  • 一般に成人の正常値は180 ~ 230mg/dLとされ、180mg/dL 以下の人は脳卒中になりやすいです。
  • 一方、260mg/dL を超えると動脈硬化を促進し、心筋梗塞、脳梗塞などになりやすいといわれています。
  • なお心臓病は糖分の取り過ぎに関連しているといわれています。(参考)

 

(参考)
※ 卵 1 個には牛乳(200cc)の 10 本分のコレステロールが含まれています。
※ また、牛・豚肉(100g)は牛乳 4 本分に相当します。

 


 

4. たんぱく質

牛乳のたんぱく質は約3%含まれています。
カゼインは多量のミネラルを抱え込んだミセル構造になっており、牛乳中ではコロイド粒子として拡散しています。
これに光が当たって乱反射することによって、牛乳が白く見えるのです。

 

 

水溶性のたんぱく質は過剰の加熱によって水に溶けにくくなります。
たんぱく質には、各種のアルブミン、グロブリンなどが含まれており、それぞれ免疫性、静菌性、動物細胞の増殖などの役割を持っているといわれています。

 


 

5. 乳糖(ラクトース)

乳糖は牛乳中に約 4 ~ 5%含まれている糖分です。(人乳には 7%含まれています)

* 乳糖は、単糖類のガラクトースとグルコース(ブドウ糖)とが 1 分子ずつ結合してできています。

 

 

* 乳糖の消化性

消化管内でラクターゼ(乳糖加水分解酵素)によって、上記の単糖類に分解されます。しかし、このラクターゼの働きの弱い人は下痢・腹痛などを引き起こします。
こうした人には、乳酸菌によって乳糖が分解されたヨーグルトをおすすめします。

 

* 乳糖の生理的役割

 

1. 腸内菌叢に対する役割

乳糖は胃では吸収されず、小腸下部で分解され吸収されます。
乳酸菌が乳糖を栄養として増殖し、酸を生成することで病原菌や腐敗菌の成長が抑制されます。

2. ガラクトースの供給

ガラクトースは乳児期の脳や神経細胞の発達に役立ちます。
しかし、過剰摂取すると白内障などの病気になることがあるので、できるだけ牛乳のような自然な食品から摂取するのが良いでしょう。

 


  

6. ビタミン類

牛乳にはほとんどのビタミンが含まれています。
特に ビタミン B₂、B₁₂ が豊富ですが、全体的には少量のため、ジャガイモなどと組み合わせるのが理想的です。

牛乳中における熱不安定性ビタミンの加熱処理による減少度(IDF 1972)

 パスチャライズ乳殺菌乳UHT 処理乳
チアミン(B₁)5%2.01.0
ビタミン B₁₂0605
葉酸04015
ビタミン C04010

 

 


  

7. カルシウム (Ca)

カルシウムが不足すると、肩こり・腰痛・疲労感・情緒不安定・アレルギー・循環器疾患・骨粗鬆症・骨折といった様々な症状や病気になります。

血液中のカルシウムが不足すると、自律神経の働きがアンバランスとなり、神経の感受性が増して興奮し、副甲状腺の機能低下などから、口の周囲、腹部、指、筋肉のピクつき、足のしびれ等の症状が現れます。つまり、イライラの症状です。

人間のカルシウムの所要量は、 1 日 体重 1kg あたり10mg といわれています。
牛乳 100g 中には約 100mg のカルシウムが含まれています。日本では魚介類・海草・野菜からカルシウムを得ていましたが、これらの体内の吸収率は、野菜20%、魚35%、牛乳は55%であるといわれています。牛乳は消化吸収の高い食品といえます。

 

カフェインを含む飲み物や喫煙によって容易にカルシウムが体内から排泄されます。
血液中のカルシウムが不足すると、とりあえず、骨や歯から溶かし出して補充します。こうして虫歯になったり、骨粗相症になったりします。

 

* 加熱によるカルシウムの状態変化

全カルシウムの 2/3 はコロイド性としてカゼインに結合した状態であり、残りの1/3 は水溶性のカルシウムです。この水溶性のカルシウムは熱によってコロイド性のカルシウムになり、パスチャライズ乳では僅かに変化するが、UHT乳では10〜13%も変化します。

 

* 加熱によるカルシウムの吸収効果の変化

上記のようにカルシウムは熱によって一部不溶性になりますが、体内ではこの不溶性カルシウムも分解し吸収します。

しかし、牛乳中のカルシウムはたんぱく質と密接な関係を持っており、胃袋の中でたんぱく質が大きくしっかり固まるほど、ゆっくり消化するので吸収率が良くなるといわれています。
(胃の中で十分に固まらないと、直ちに腸の方に移動し、ペプシンなどの消化液が十分に分泌せず、消化不良となります。)

たんぱく質は過剰の熱がかかると、胃の中では比較的小さな柔らかい凝固物となり、パスチャライズ乳のように適切な熱処理が行われると、胃の中では大きくしっかりとした塊になります。

では、どのような牛乳をパスチャライズ牛乳といい、他の牛乳とどのように区別されているのでしょうか???

 


 

8. 製品としての牛乳

欧州に本部がある国際乳業連盟(IDF)では、次のように分類・定義を定めています。

 

* パスチャライズド牛乳

牛乳の栄養・性質を損なうことなく、病原微生物の危険性を最小にした熱処理牛乳。

 

* 超高温熱処理牛乳(UHT 牛乳)

有益な微生物も含め、すべての微生物を殺した熱処理牛乳。 

 

 


 

9. 醗酵乳

(1) 日本における定義と成分規格

* 定義

『乳またはこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳糖を乳酸菌または酵母で発酵させ、糊状または液状にしたもの又はこれを凍結したもの』

* 成分規格

『無脂乳固形分 8.0%以上、乳酸菌数または酵母数(1ml あたり)1,000 万以上、大腸菌陰性』

 

(2) 醗酵における保健効果の発現

  1. たんぱく質の栄養価と吸収性の向上
  2. 脂肪の消化吸収性の向上
  3. ミネラルの効果の増大
  4. コレステロールの低下
  5. 乳糖不耐症への効果
  6. 腸の癌などの発生制御効果